尾崎弘和速い!世界選手権・ユニバーシアード開催される



世界選手権スプリント予選を走った尾崎弘和選手。 出典:オリエンテーリングクラブ・トータス会員国沢氏のtwitter。



尾崎選手 4種目で日本人トップ

 オリエンテーリング大会の最高峰にあたる世界選手権(WOC)と そのジュニア版であるジュニア世界選手権(JWOC)、 大学生版であるユニバーシアード(WUOC)が この7月から8月にかけて相次いで開催されました。 日本代表チームには小山様の教え子たちが多数選出され、 世界を舞台に熱戦を繰り広げました。

 今年の日本代表チームの中でひときわ活躍が目立ったのが尾崎弘和選手です。 尾崎選手は小山様の麻布学園の後輩にあたり、 中学の頃から小山様のもとで育ってきた小山様肝いりの教え子として知られています。 小山様がチームリーダーとして引っ張るオリエンテーリングクラブ・トータスにも 早い時期から入会し、トータスが誇る若手の名選手として存在感を示してきました。 この1年あまりにわたってオリエンテーリングの本場・スウェーデンに留学して修行を重ね、 日本国内では右に出る者がいないほどの名選手に成長しています。

 その尾崎選手、今回は世界選手権1種目とユニバーシアード4種目の合計5種目に出場。 そのうちの4種目で日本人トップの成績を出し、 スウェーデンでの修行の成果を関係者の間に鮮明に印象づけました。

 小山様の東京工業大学の後輩にあたる戸上選手は オリエンテーリング歴わずか3年目にしてユニバーシアードに日本代表として出場。 尾崎・戸上両選手を含めて小山様がチームリーダーとして引っ張る オリエンテーリングクラブ・トータスからは全部で9名の選手が 日本代表として大会に出場しました(表1)。


世界選手権スプリント 2008年以来のトップ比111%

 表1を見ると尾崎選手の順位が一番良かったのがスプリントリレーの12位で、 一番悪かったのがミドルの63位となっています。 この順位だけを見ると2つの種目で競技成績に随分と大きな開きがあるように見えますね。 でも実はスプリントリレーは28人の中の12位で、ミドルは110人の中の63位です。 ですからどちらも全参加者の中の真ん中付近の成績、 と考えれば実は2つの種目で競技成績に それほど大きな差があるわけではないことが分かります。

 このように競技成績の良し悪しは順位だけを見ていてもよく分かりません。 それではどのような指標を使えば競技成績の良し悪しが一目で分かるでしょうか。 日本代表チームが目標設定や競技成績の評価のためにしばしば用いる指標の一つに トップの選手とのタイム比(トップ比)があります。 表1にはこのトップ比を合わせて示しました。

 尾崎選手が出場した5種目の中でトップ比が一番良かったのが 世界選手権のスプリント予選の111% です。 実はこのトップ比111% というタイム、日本代表チームの男子スプリントの成績としては 2008年以来6年ぶりの快挙なのです。

 表2には2008年から2014年までの世界選手権男子スプリント予選での 日本代表チームの成績の推移を示しました。 2008年に山口選手がトップ比111% を出した後、 2009年から2013年までは概ね120% 台で推移してきたことが分かります。 ですから今回の世界選手権で尾崎選手が出したトップ比111% は 例年の日本代表を上回る競技成績であり、 尾崎選手が日本代表の中でもひときわ優れた実力をつけてきたことの証と言えます。


ミドルでもしっかり活躍 小山様の志を受け継ぐ

 表1を見ると3つの大会のいずれにおいても スプリント競技ではトップ比110〜120% 台を出した選手が 尾崎選手のほかにも何人かいますが、 ミドル競技ではほぼ全ての選手が130% を超えてしまっています。 どうもミドルは日本人が苦手な競技種目のようです。

 ですが、その中にあってただ一人、尾崎選手だけが ユニバーシアードのミドル競技でトップ比130% を切るタイムを出しています(表1)。

 表3には過去10年間のユニバーシアードでの日本人最高成績をまとめました。 やはり過去の大会を見てもスプリント競技と比較して ミドル競技のトップ比・順位が下がる傾向にあるようです。 またミドル競技で日本人が130% を切ったのは 2004年以来10年ぶりであることも分かります。

 表3からは日本代表チームが辿ってきた歴史が読み取れます。 2004年の成績が良かったのは2005年に日本で開催された世界選手権を目指して 多くの有力選手が死力を尽くし切磋琢磨し合った効果と考えられます。 2005年の世界選手権が終わると当時の日本代表ばかりでなく まさしく日本中が燃え尽きムードになり、低迷期が続きます。 このまま日本を駄目にしてはいけない、その使命感を持って 先頭に立って世界に乗り込んでいったのがほかならぬ小山様でした。 小山様は2008年と2010年の2度、自らユニバーシアード日本代表になり、 2度ともミドル競技で日本人トップの成績を出します。 苦しい時代の日本代表、その中でもみんなが一番不得意とする部分を支えてきたのが 小山様だったのです。

 小山様がミドルで好成績を出せたのには理由がありました。 小山様は2007年と2008年の2回にわたってそれぞれ1ヶ月ほど、 日本代表での正規の遠征とは別に単身海外に乗り込んで練習を重ねてきました。 海外の森に慣れることでミドル競技の特徴である難易度の高いコースに 対応できる力を身につけてきたのです。

 尾崎選手のスウェーデン留学も小山様が切り拓いたこの道筋に沿ったものであり、 師匠の志を受け継いだと言えます。 但し小山様が夏休みを利用して長期遠征したのに対し、 学業留学を兼ねることで1年におよぶ長期の武者修行を可能にしたところに 尾崎選手独自の工夫も見られました。 その成果が今回のミドルでの10年ぶりのトップ比120% 台であり、 師弟の愛に裏打ちされた二人の創意工夫のなせる業と言えます。



表1.  2014年世界選手権、ジュニア世界選手権、ユニバーシアードの結果のまとめ。 ()内はトップの選手とのタイム比(トップ比)。 大会・種目毎の日本人内最高順位を紫で強調表示しています。 競技種目のリンクをクリックすると詳細を確認できます。
大会名 世界選手権(WOC) ジュニア世界選手権(JWOC) ユニバーシアード(WUOC)
開催地 イタリア ブルガリア チェコ
競技種目 スプリント予選 スプリントリレー ロング ミドル リレー スプリント ロング ミドル予選 リレー スプリントリレー ロング スプリント ミドル リレー
開催日 7/5(土) 7/7(月) 7/9(水) 7/11(金) 7/12(土) 7/22(火) 7/23(水) 7/25(金) 7/27(日) 8/12(火) 8/13(水) 8/14(木) 8/15(金) 8/16(土)
尾崎弘和 23位(111%)                 12位(112%)   42位(119%) 63位(127%) 41位(144%)
真保陽一 27位(110%) 25位(117%)   63位(154%) 31位(151%)         21位(116%)   43位(119%) 80位(136%) 28位(129%)
宮川早穂       65位(234%) 28位(211%)         失格     77位(148%) 30位(169%)
稲毛日菜子   30位(114%) 56位(140%)   28位(155%)                  
加納尚子 24位(119%) 24位(129%)     26位(169%)                  
小暮円香 28位(137%)                          
長縄知晃 33位(120%) 22位(114%)                        
堀田遼         29位(130%)                  
結城克哉     50位(134%)   28位(148%)                  
砂田莉紗                     84位(192%) 74位(150%)   32位(220%)
高橋美誉                     77位(168%)   76位(148%) 32位(148%)
高橋祐貴                     82位(169%)   101位(170%) 37位(157%)
戸上直哉                     80位(164%) 84位(136%)   35位(160%)
細川知希                     57位(131%)   86位(142%) 36位(143%)
松下睦生                     56位(130%) 74位(128%)   36位(127%)
守屋舞香                     74位(162%) 85位(241%)   25位(157%)
柳川梓                   失格   失格 92位(191%) 34位(167%)
渡邉彩子                     79位(176%)   91位(191%) 29位(204%)
東将央           146位(137%) 149位(210%) 52位(195%) 失格          
五百倉大輔           139位(130%) 124位(158%) 38位(139%) 142位(158%)          
糸井川壮大           140位(131%) 139位(180%) 45位(155%) 129位(141%)          
稲森剛           141位(132%) 112位(151%) 48位(167%) 115位(126%)          
川島実紗           122位(153%) 110位(226%) 43位(243%) 115位(190%)          
五味あずさ           98位(128%) 93位(167%) 42位(196%) 98位(151%)          
澤口弘樹           134位(128%) 131位(167%) 43位(163%) 151位(196%)          
中村茉菜           120位(144%) dnf 38位(204%) 121位(267%)          
深田恒           133位(128%) 126位(160%) 32位(133%) 93位(117%)          
宮本和奏           124位(160%) 失格 41位(190%) 114位(186%)          

表2.  2008年以降の世界選手権男子スプリント競技予選における トップの選手とのタイム比(トップ比)の推移。
開催地 トップ比 氏名 備考
2008 チェコ 111% 山口大助  
2009 ハンガリー 121% 藤沼崇  
2010 ノルウェー 122% 山口大助  
2011 フランス 120% 小林遼  
2012 スイス 114% 松澤俊行  
2013 フィンランド 120% 谷川友太  
2014 イタリア 110% 真保陽一 尾崎選手111%。 タイム比が順位通りになっていないのは予選の組が異なるため。

表3.  2004年以降のユニバーシアード(WUOC)の スプリント競技およびミドル競技における 日本人最高成績の推移。
開催地 スプリント競技 ミドル競技
トップ比 順位 氏名 トップ比 順位 氏名
2004 チェコ 126% 49位 佐々木良宜 126% 59位 西尾信寛
2006 スロバキア 111% 42位 高橋雄哉 153% 73位 西尾信寛
2008 エストニア 118% 53位 高橋雄哉 195% 83位 小山温史
2010 スウェーデン 132% 73位 松井健哉 163% 93位 小山温史
2012 スペイン 134% 72位 結城克哉 171% 86位 細淵晃平
2014 チェコ 119% 42位 尾崎弘和 127% 63位 尾崎弘和


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